2013年6月4日火曜日

ビジネスとかイノベーションとか、カタカナばっかり振り回す彼らは『モテるためのマニュアル本』信者と一緒に見える

僕が働いているのは会社の研究開発セクションというところでして。茶畑に囲まれた職場で世の中の最先端を造り出せというのが我々のミッションなのです。この立地に加えて、そもそもが田舎の製造業という業態の我が社で”世の中の最先端”なんていうことを標榜している部署には、カウンターとして必ず一定の割合で「オレ、世の中のハヤりはちゃんと押さえてるから」「オレ、何でもわかってるから」とでも言わんばかりの、「言ってることだけ不自然に若作りな田舎のおじさん」みたいな人達がいるのです。

こういう彼らの特徴の一つに、ビジネスとかイノベーションとかアーリーアダプターとかコアコンピタンスとか、とにかく「やたらカタカナを使う」というのがあります。そして、彼らはだいたいソフトバンクがどうとかジョブズがどうとか、何かしら彼らが思う成功例を引き合いに出しながら、「うちの会社もあんな風になろうよ」みたいなことを言うわけです。さらにもうちょっと彼らの話を聞いてみると、どうやら彼らがこうなった背景には、彼らが感銘を受けたという(前回の言い方をすると「器用に血肉化した」)ビジネス書があるみたいなのです。
あんまりちゃんと読んだこと無いので、かなり思い込みも入ってますが。ビジネス書って例えばスティーブ・ジョブズがどうとか、松下幸之助がどうとか、googleがどうとか、勝ち組の成功例だけを羅列して後付でもっともらしい説明をつけて本が出来てるような印象があります。だけどそういう本に出てくるのって、人望だったり発想だったり、なにより”運”も含めて何かしらが人並み外れた人達であって。普通の人が真似できるような要素っていうのはほとんど無いんじゃないかと思います。そもそも、その本に登場する彼らはそんな本なんて読まなくてもその成功を成しえたという事実こそが、その手のビジネス書の無意味さを物語っているように思えるのです。

この関係は何から何まで「モテるためのマニュアル本」と相似形だと思うのです。モテるためのマニュアル本を読んでる人は、マニュアル本を手にしている時点で「モテる」ための重要な資質を明らかに欠いているというのは誰でもわかることです。もっと簡単な別の言い方をしましょう。週刊プレイボーイを毎号買ってる人にはたぶんプレイボーイはいません。それと同じです。
しかしながら、マニュアル本(これまたちゃんと読んだこと無いけど)はそんな本当のことを言っては商売にならないので、「君にもできる」「こうすれば君もモテる」とささやきかけてその気にさせるようにできてるんだろうと思います。実際にはその本を手にした瞬間に、読者に対して「モテる才能が無い」という烙印を押してるとしか思えないんですけどね。

「モテるためのマニュアル本」の話は結構誰にもでも納得してもらえると思うのですが。ところがこれが"ビジネス"の話になると、途端に理性的な判断を失う人がなぜか増えてしまうように僕には見えるのです。やっぱり「君にもできる」というメッセージにすがりたくなるからなんですかね?そして、ここから後は前回の「スタンダードを血肉化した挙句に信仰するに至ってしまう彼ら」と全く同じ話になります。凡庸な人ほどビジネス本の信者に陥りやすい上に、本から学んだであろうことを杓子定規に振り回してしまった結果、才能のある人のいいところまで潰していきます。かくして、ビジネス書が喧伝している何かデカい成功をつかむ可能性をどんどん潰していくわけです。

人にはそれぞれ天分っていうものがあって、それぞれが身の丈にあった役割を果たして社会が回ってればいいと思うんですけどね。世の中にインパクトを与えるようなことが出来る人っていうのは実際には世の中のほんの一握りだけです。むしろそんなに沢山いても困ります。いいじゃん、普通の人で。

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