2017年10月15日日曜日

北朝鮮に対して軍事力は何の抑止力にもならない

衆議院選挙の投票日の一週間前となりました。あんまり悲観的なことは言いたくないのですが、自民を中心に改憲勢力が優勢という予測が立っているそうです。相次ぐ不祥事に「丁寧に説明する」とか言ってたくせに一切の説明責任から逃げるように解散した安倍政権に投票できるセンスが僕には全く理解できないのですが。
twitterを見てたら津田大介がこういうことを言ってるのを見つけました。
知人の奥さん(アラサー)は「今回は自民党入れる。北朝鮮恐いから」と。知人が「むしろ、北朝鮮情勢悪化させるのでは?」と諭したところ「野党なら何もやらない。それよりかはマシ」という理由みたい。そういう理由で自民を支持する人は結構多いんだろう。結局テレビが最強のアシストしてるんだよね。
全員が全員というわけではないんでしょうが、自民党に投票する人ってたぶんこういう人達なんでしょうね。たぶんこういう人の方がこの国では僕より幸せに生きていけるんだろうなと思います。とはいえ、ちょっとさすがにそれはナイーブ過ぎないですか?と思うので、選挙の結果が出る前にこれについて思うところを書き連ねておきたいと思います。

結論から申し上げると、日本は北朝鮮情勢に対して与えられる影響はごく僅かなんじゃないかと思います。しかも、この「僅か」に含まれるのは経済制裁や対話などの外交的な努力であって、日本の軍事力を増強することはおそらく何の意味も成さないと思います。
だいたい北朝鮮は世界一の軍事大国であるアメリカ相手に徴発を行っている国なのです。その立場について真剣に想像してみてください。北朝鮮だって、アメリカがその気になれば自国を一瞬で焦土にできることくらいは重々承知の上でやっているわけです。ここで日本が今更軍事力を少々増強したところで、アメリカに比べたらどんぐりの背比べレベルの差分でしかないですよね?それが北朝鮮に対して何か意味のある抑止力になると思いますか?
件の津田大介のtweetに登場する人は「軍事的なオプションをチラつかせれば北朝鮮への抑止力になると思いたい」のでしょうが。ここまで述べたように軍事力の増強は北朝鮮に対して何ら効果的な対策にはなりません。そして、僅かながら意味がありそうな外交について安倍政権はトランプに追従して対話を拒否する姿勢を見せています。つまるところ、安倍政権は状況を悪化させているだけではないか?という津田大介の指摘は妥当だと思います。

よく、「9条があるから日本は北朝鮮にナメられるんだ」とか、「北朝鮮に対する抑止力となるために、日本も核武装すべきだ」とか言う人がいらっしゃるのですが。彼らの言ってることは「北朝鮮が合理的な思考に基づいて立ち振る舞いを決定すること」が大前提になっています。ここに重大なピットフォールがあるのではないでしょうか?
北朝鮮は、少なくとも表面的な態度としては、狂人として振舞うことを自身に課しています。この狂人としての立ち振る舞いの鮮度を劣化させずに、程々の緊張を保ち続けることでこれまで彼らは生きながらえてきました。だって、「北朝鮮は何をしでかすか分からない」と相手に思い込ませ続けないと挑発には価値が無いですからね。
以上より、仮に9条が無くなろうが日本が核武装しようが、それが北朝鮮の態度を軟化させることに貢献するとは期待できないんじゃないでしょうか?狂人として振舞うことを自身に課している以上、一度でもマトモな対応をしてしまうとこれまでの努力が無駄になってしまいます。だから、北朝鮮は日本が軍備を増強したら間違いなく挑発行為をエスカレートさせる方向に舵を切るでしょう。というより、彼らだってそうせざるを得ないのです。

以上申し上げたことは「ちょっと考えれば自明なこと」だと思います。しかし、残念ながら日本では自分はマイノリティなんであろうこともなんとなく分かります。なんでこうなるかというと、残念ながら「この国では自分の頭で考える気の無い人がマジョリティになってしまった」からなんだろうと思います。
北朝鮮関連のニュースになると、日本のテレビでは判で押したように「ロケット、軍事パレード、拍手するカリアゲの将軍様、勇ましくニュースを読み上げるチマチョゴリのニュースキャスター」だけが出てきますが。こういった安倍政権とマスコミによる北朝鮮についての印象操作は「北朝鮮=核実験、ミサイル=何を考えているか分からない怖い人達」という図式だけを刷り込んで、「もうとにかく訳のわからない狂人が恐いから、とりあえず軍備を増強しよう」という方向に日本人のマジョリティを誘導してしまったように見えます。
この辺りの手腕は、さすがナチスの手法に学んだだけのことはあるなと思います。が、主権者たる国民の知的水準を見下してナメてかかるのは民主主義国家の政治家としての彼ら自身の存在意義を自ら毀損しているように僕には見えます。

北朝鮮の脅威を煽って自民党が軍事力に対するフリーハンドを得た先に本当に実現したいのは、アメリカのパシリとして中東などのテロ拠点や紛争地帯に不必要な介入を行い、特に恨みがあるわけでもない人達を殺傷することで。これをやってしまうと日本はアメリカの対テロ戦争のような泥沼に巻き込まれ、日本の一般市民がテロの脅威に晒されることなるでしょう。結果的に、自民党に軍事力へのフリーハンドを許すことは、北朝鮮の脅威に対しては有効な対策にならないだけでなく、日本の一般市民をテロに巻き込まれる危険に晒すだけで何のメリットも無いのではないでしょうか?
戦後70年にわたって、日本には自衛隊という実質的な軍隊組織はあれども外国人を殺傷することは一度たりともありませんでした。そうやって「外国の恨みを買うことがなかった」ということの価値がどうも過小評価されているような気がしてならないのです。




2017年10月14日土曜日

枝野さんと立憲民主党は往年の前田日明とUWFに見える

ご存知の通り、この一カ月くらいで政局は目まぐるしく変化しました。民主党の分裂は結果として自民党を利する結果になったのではないかという指摘もあるのですが、良識派(リベラルという言い方よりはこっちのほうがまだ妥当な気がするのです)が躊躇なく投票できる立憲民主党という党ができたのはよかったんじゃないかと思います。
これまでの民主党って、昔の自民党のようにリベラルから保守、タカ派からハト派まで「いろんな人がいる政党」だったのですが。中には前原の一派のようにほとんど自民党とポリシーに大差ない人もいたりしたわけで、おかげでどうしても党としてのイデオロギーがあやふやになってしまっていた感はあります。

立憲民主党の結成以来、僕のtwitterのTLは連日立憲民主党祭りのような状況になっています。twitterは良くも悪くも自分とポリシーの近い人の情報ばかりを遠心分離して取り出してしまいがちなメディアなのですが、それを差し引いても立憲民主党に対する良識派の期待はかなり高いように思うのです。例えば、内田樹先生はtwitterで立憲民主党への個人献金を行ったと表明しました。
「まっとうな政治」というキーワードにも現れているように、良識派の人々の立憲民主党への期待の背景には「やっと諸手を挙げて応援できる政党ができた」ということがあるんだと思います。立憲民主党ができる前の状況だと「もうこれだったらいっそのこと共産党に入れるか」と思っていた層にとっては、立憲民主党は待望していた理想的な党にみえるのではないでしょうか。

さて。そんな立憲民主党と枝野さんに対する良識派層の反応を見てると、僕はどうしてもUWFと前田日明のことを思い出さずにはいられないのです。そのうちプチ鹿島辺りが取り上げてくれるだろうと思ってしばらくウォッチしていたのですが、誰も言及しないようなので自分でblogに書いてみることにします。これを読んでる方でこの辺のプロレス史に明るくい方はたぶんいないと思うので改めて書いてみると。。
UWFというのはプロレス団体です。UWF結成当時のプロレス界は猪木(新日)と馬場(全日)という「同質であるようで決定的に相容れない二人」による二極が拮抗した状態が長らく続いていました。そこから新日の一部から分離したUWFという団体が誕生しました(この経緯だけでも所説色々あるのですが気になる方はネットで検索してみてください)。このUWFという団体はそれまでのプロレスとは異なり、現在の総合格闘技に近いようなスタイルを標榜して一大ムーブメントを起こしました。この団体を率いていたのが、カリスマエースだった前田日明です。

中島らもはUWFができた当時、「やっと大人の見れるプロレスができたと狂喜乱舞した」のだそうですが。立憲民主党に大して寄せられている期待には、このときの中島らもと同じような熱量を感じるのです。つまり、「やっと諸手を挙げて応援できるまともな政党がえきた」と。
プロレス団体としてのUWFは色々な困難に直面し、その後内輪モメや離散集合を繰り返すことになりましたが、UWFがあったおかげで今日の日本の格闘技があると言っても過言ではないくらい絶大な影響を後世に残しました。立憲民主党が今回の選挙でどのような結果となるかはわかりませんが、この先に繋がる何かの始まりとなってくれることを期待します。

枝野さんがテレビに登場するときには前田日明の入場テーマだった「ダンバイン飛ぶ」や「キャプチュード」を流してくれないかな…。