2016年12月3日土曜日

三木谷さん、プロレスから学んでください

楽天が来季からFCバルセロナのユニフォームの胸スポンサーになるんだそうです。楽天および三木谷氏についてはこことかここで言及している通り、僕はあんまり良い印象を持っていません。なので、このニュースを僕は忸怩たる思いで見ていました。僕にとってFCバルセロナの試合を見るのは、帰国以来どんどん遠くなっていくスペインと自分をつなぐ数少ないチャネルの一つなのです。だから僕の忸怩たる思いの主たる理由は「僕とスペインとの間に日本人が土足で踏み込んできた。しかもそれがよりによって三木谷氏だった。」ということなのでしょう。
僕が知る限りのバルセロナ在住の日本人の反応も概ね非常にネガティブでした。EU最低の英語通用度を誇り、グローバル化とか競争とかいうものと真逆の存在であるスペインで長年生活している人からみれば、日本人が欧米の「グローバル企業」の真似事を今更周回遅れでやってるのは一番みっともなく見えるんだろうと思います。一方で、バルセロナの地元の反応は「中東のオイルマネーの匂いがする現在のカタール航空が嫌だから、それよりはよく知らないけどrakutenの方がいいんじゃない?」といった具合に、非常に消極的な理由ではありますが在住日本人よりは好意的な反応が多いそうです。
ちなみに楽天は英語公用語化とかいってイキっているわりには海外進出はほとんど成功していないそうで。スペインに至っては既に2016年6月にスペインから撤退しています。FCバルセロナは世界中が注目しているチームではあるので、勿論スポンサーの広告効果はスペインだけのためのものではないのでしょうが。とはいえスペイン目線で考えると、「ゲーム機のハードを捨ててしまった後にそのハード専用のゲームを買う」というぐらい不可解な行動に見えますね。
ちなみに、楽天の胸スポンサーの話がニュースに出て以来、バルサは1勝3分と大不調に陥っています。。これを書いている現在は「あと数時間でクラシコ(レイアール・マドリとバルサの伝統の一戦)で、ここで負けると今シーズンはかなり厳しくなる」という状況なのですが、これでマドリに負けでもしたらいよいよ楽天に責任取ってほしいです。

散々FCバルセロナの話をしてしまいましたが、実は、本日話題に取り上げたいのはサッカーではなく野球の話なのです。三木谷氏がプロ野球のオーナー会議で外国人枠の撤廃を提案したという話について、色々とモノ申したいことがあるのです。まず三木谷氏の主張はこういうことなんだそうです。「過去に欧州サッカーで撤廃をしたら盛り上がった例がある。世界レベルのリーグをつくり、プロとして最高のプレーをファンに見せるためには日本人も外国人もない」。
もしも、仮に。外国人枠を撤廃した結果、ほとんど外国人だらけになったチームが最高のプレーを見せたとして。そのチームを応援するファンはどこの誰なんでしょう?もはやその時には「ファン」は日本人である必要さえもないのかもしれないですが、現在の日本のプロ野球ファンがそのまま三木谷氏の言葉に出てくる「ファン」になってくれるとは到底思えません。少なくとも現在の日本のプロ野球ファンの大半は地域や郷土への愛着をチームに投影することでファンたりえているわけで、じゃあ外国人だらけのチームに対して何も抵抗なく同じことができるか?というと、それは日本人にはかなり厳しいのではないでしょういか。

三木谷氏の発言に伏流しているマインドは要するにこういうことなんだと思います。「オレ=楽天はグローバル企業として、日本国内に留まらずに世界中の企業と同じ土俵の上で勝負をしている。オレはそのグローバル企業の世界観をプロ野球も含めたあらゆるものに持ち込むのが当然だと思っているけど、何か文句あるか?」「プロ野球はビジネスの観点からするとコンテンツだ。いいコンテンツを作れば世界中のお客さんを相手にビジネスができるはずだ。」。
過去にも、このようなビジネスのマインドをそのままプロ野球に持ち込もうとした人がいました。村上ファンドの村上世彰氏による阪神買収騒動です。村上氏の主張をあまりちゃんと理解できている自信は無いのですが、彼は「ファンが株主になる」といった形で株式会社のフォーマットをそのままプロ野球の球団の運営/経営とファンの関係に援用することを主張していたように思います。あのとき結局どういう顛末で買収にならなかったのかは記憶にないのですが、大半の阪神ファンの反応は非常にネガティブなものでした。原因は村上氏の胡散臭さにもあるのでしょうが、そもそもプロ野球にビジネスの世界観を持ち込まれることに対してかなり強い拒否反応があったのだと思います。

あんまり文句ばっかり言ってても仕方ないので、最後に僕からの代案なのですが。一言でいうとタイトルにもあるように「プロレスから学んでください」です。プロレスはその草創期から外国人レスラーのヒール(悪役)を日本人が倒すというフォーマットを大なり小なり伝統として維持してきました。WBCやサッカーの日本代表を見てもわかるように、「日本vs外国」という構図には日本人は目がありません。だから、このフォーマットをプロ野球に恒常的に持ち込めば良いのです。
例えば、日本のプロ野球の各リーグに一球団だけ外国人だけを集めた強いチームを作るのです。監督は矢沢永吉とか蝶野正洋みたいに普段から無駄に周りを外国人で固めている人がよいでしょう(日本のプロ野球にこういう人材はなかなかいない)。なるだけヒールに適した憎たらしくてスゴいパワーの外国人を集めてくるとヒットすること間違いなしです。
あるいは、日中台韓くらいの東アジア圏でリーグを作って、恒常的にWBCみたいな状態を作るのもよいのではないでしょうか?これも盛り上がることは間違いないと思います。欧州のサッカーは「過去にさんざん戦争をして懲りた反省から、サッカーが都市、国家、民族の代理戦争をやって程々にガス抜きをしている」という側面もありますが、これと同じ効果が東アジアでも期待できそうな気がします。