2020年2月8日土曜日

縦読みとホンネとタテマエ

バーガーキングが近隣のマクドナルドの閉店に寄せたメッセージを縦読みすると「私たちの勝チ」と読める。ということで、ネットで話題になっているそうです。「縦読み」はほかにも芸能人の不倫など色々な話題に絡んで最近よく聞くようになった言葉なのですが。この「縦読み」の流行にはどうも日本的な厭らしさが漂っていて、あまり好感が持てないのです。

まず、「縦読み」は漢字文化の国でしかおそらく成立しないです。その昔、スペインにいたころに日本の雑誌を職場で見せたら「これ、もしかして縦書きの文字と横書きの文字が混在してるの?それを君達は読めるのか?」と驚かれました。言われてみればその通りで、漢字文化圏以外の人には縦に字を並べられても本当に読めないし、ましてや両者の表記システムが混在した誌面を読めるなんて理解できないわけです。

そして、「縦読み」が登場するのは、だいたい今回のバーガーキングのメッセージのように「横読み=タテマエ」の中に「縦読み=ホンネ」が隠されているという「ホンネとタテマエ」の文脈ですよね。これは徳川家康が豊臣家を攻める口実とした「国家安康 君臣豊楽」の現代版のようなものだと思います。この「ホンネとタテマエ」のところに、どうも日本的な厭らしさが漂っている気がするのです。

ちょっと話は飛びますが、有名ブロガーのフミコ・フミオ氏の最近の投稿にこういう記事がありました。部下と一緒に外食したら、氏が習慣的に「ごちそうさまです」と言ったのに対して、部下が「僕たちは対価を払ってサービスを買っているのだから、そんなこと言う必要はない」と言い出した。という話です。

この話は、「ホンネとタテマエ」の典型的な事例のように思えるのです。フミコ・フミオ氏が「ごちそうさまです」と言ったのは「無意識の生活習慣になったタテマエ」であり、それに対して部下はビジネスライクな「ホンネ」の立場を取っているのだと思います。

我々日本人は他者との関係において、どうしても「ホンネ=悪意や攻撃性」か「タテマエ=ブリっ子的な善良さ」の両極のどちらかしか選べないような気がするのです。日本人は常にこの両者の板挟みにあっていて、これ日本人が大なり小なり抱えている「生き辛さ」の原因のように最近思えてならないのです。

自分の知る限りでは、少なくともスペイン人にはこのような板挟みは存在しなかったです。社会が「人はそれぞれ考えてることが違ってて当たり前」という前提でできているので、上下関係や同調圧力に晒されて「ホンネ」を引っ込めて表面的な「タテマエ」で取り繕う…という必要がたぶん無いからだと思います。