2019年9月26日木曜日

ラグビーワールドカップに対する日本人の微温的な対応について

ラグビーのワールドカップが始まりました。これまでラグビーをちゃんとみたことなかったのですが、ちゃんと見てみたらこれがすごく面白いのです。ラグビーの魅力はプロレスのパワーとサッカーの戦略が同時に融合していることなのではないかと思います。にわかラグビーファンがこういうことを言ってるのはダサいなぁとは思いつつ、にわかついでに失礼なことを言わせていただくと、この面白さはこれまで日本人だけでやってるラグビーをテレビで見てる限りではどうしても感じられなかったのです。

この理由は日本人の選手のプレーの質や体格だけの問題ではなく、見てる僕の問題だと思います。昭和育ちにはラグビーといえばスクールウォーズなどに代表される70-80年代のスポ根のイメージがどうしてもついて回ってしまうのです。日本人がたくさん集まってラグビーをやってるのを見ていると、どうしてもこのイメージから脱却するのが難しいのです。念のため改めて申し上げておくと、これは日本人のラグビー選手の問題ではなく、ほとんど見てる側の僕の問題だと思います。

とはいえ、一方でラグビー日本代表に対して日本人の大半はどこか冷たいですよね。いまだにラグビーといえば五郎丸以外の選手は知らない人が大半なんじゃないでしょうか(今回の代表チームに五郎丸はいないんですけどね)。以前もこのblogに書きましたが、その原因は「外国人が多い」からだと思います。テレビのCMにキャプテンのマイケル・リーチが出てたりはしますが、五郎丸ほどの国民的認知度には達していないと思います。

この是非はさておき、このあたりのラグビー日本代表に対する日本人のどこか冷たい感じは、そのままラグビーのワールドカップというイベントそのものに対する日本人の微温的な反応にもつながっていると思います。これに一番近いのは、日本で開催するサッカーのクラブワールドカップなのではないかと思います。

クラブワールドカップは海外のビッグクラブから有名選手が来るのですが、彼らに対する日本のテレビの対応は大昔の言葉でいうと「外タレ」、もうちょっと最近の言い方で言うと「海外セレブ来日」に近いです。一方で、日本で開催するクラブワールドカップにアジア代表として日本のどこかのクラブチームが出場していても、そのチームのサポーター以外の一般の日本人は「頼むから勝ってくれ」なんて言ってませんし、もしも勝ったところで渋谷の交差点で暴れる人は誰もいないでしょう。

運営面からみると、ラグビーのワールドカップは東京オリンピックのダメなところをことごとくクリアしている点でも好感が持てます。ちゃんと気候のいい時期を選んで開催していること、無駄にハコモノを増やさずに既存のスタジアムをそのまま利用していること、などなど、ことごとく来年の東京オリンピックに対するカウンターになっていると思います。

何よりも素晴らしいのは、日本人が「おもてなし」とかいってはしゃいでないことです。上述したようなラグビーワールドカップに対する微温的な日本人の態度は、「はしゃげばはしゃぐほど、明後日の方向にズレていく」という我が国の国民病の発症を見事に抑制しています。東京オリンピックにもこれくらいの姿勢で臨むのがたぶん丁度よいのではないでしょうか。

2019年9月1日日曜日

子供向け番組を通して見える日本のジェンダー

うちの娘も幼稚園に入るまではスーパー戦隊やウルトラマンをわりと喜んで見ていました。現役でテレビでやってる特撮だけでなく、ウルトラマンタロウとかジャッカー電撃隊とか、妙にシブいものをツタヤで借りてきて見てた時期もありました。が、幼稚園に入ったあたりからはジェンダーに対する意識が割と明確になってきたのか、特撮を一緒に見ようと言うと「えー、それって男が見るやつじゃん」とか言うようになりました。
しかし、テレビの放映はプリキュアが終わったらその後に仮面ライダーとスーパー戦隊が続く「スーパーヒーロータイム」になっておりまして。プリキュアの後の惰性でぼんやりとではありますが僕は一応ストーリーを追える程度にはスーパーヒーロータイムを見ています。この8月末をもって仮面ライダージオウが終了したのですが、この最終回を見ながら考えたことを少し書いてみようと思います。

仮面ライダージオウでは、仮面ライダー側にツクヨミという女の子キャラが出てきます。当初はこれと言って特殊な能力を持つキャラではなかったのですが、だんだん最終回に近づくにつれて、実は悪者のボスの妹であったことが明らかになってきます。そして、最終回の一話前になって、このツクヨミは仮面ライダーに変身しました。仮面ライダーの歴史上かなり画期的な女性の仮面ライダーが誕生したわけです。
仮面ライダーについてはこの一作前のビルドでも同じような立ち位置の女性キャラクターがいました。さすがに仮面ライダーに変身まではしないのですが、物語の終盤までは特に普通の人だったのに、終盤になって実は火星の王妃の魂が乗り移っていたことになって、あんなことやこんなことをする…という展開でした。

最近の男の子向けの特撮って、特殊能力を持たない普通の女の人があんまり出てこないんですよね。もちろん、スーパー戦隊シリーズでは必ず戦隊の中に一人は女性がいるのですが、あれは変身して戦うという特殊能力をしっかり持っています。僕が言いたいのは、
・大昔の仮面ライダーなどに出てきた、子供やヒロイン的立場の女性
・戦隊モノの特撮に出てくる、司令官の補佐役の女の人
みたいな、これと言って特殊能力を持たない人が最近の特撮には出てこないように思うのです。
ここに、今の世の中の世相が反映されているような気がするのです。例えば安倍政権の「女性の活用」なんかは典型的だと思うもむのですが、「女性の活用」と言いいながらも、例えば稲田朋美とか片山さつきみたいな、ああいう男社会の中で価値を認められる女性にしか社会的な立場を認めていないですよね?最近の男の子向けの特撮を見てると、どうもあの「女性の活用」と同じ匂いがするように思うのです。

ゲストキャラとはいえ、女性の仮面ライダーである「仮面ライダーツクヨミ」が誕生したことは、一期前のプリキュアで男性のプリキュアが誕生したことと相似形の出来事で、ジェンダーの垣根が解体されつつあることを象徴しているようにも見えます。しかしその一方で、結局は男社会の都合に合わせられる女性にしか活躍の場が与えらえてないという日本の有り様もそのまま男の子向けの特撮には反映されているように思います。
ちなみに、ここから上の世代に上がって少年漫画になると、女性キャラには「萌え」や「無駄に巨乳」などの性的な愛玩要素が加わってきて、話がややこしくなります。しかも、その性的愛玩要素を持った女の子が戦ったりする(「艦これ」とか「ガルパン」なんかをイメージしてください)となる…とまぁ、こうやって書いてて思いますが、冷静に考えたら結構な変態ですよね。日本人って。。

登場人物が全員ゲイの仮面ライダーとか、男だけのプリキュアとか、そんなものが出てくるような時代になれば相当面白いと思うんですけどね。。