2013年7月13日土曜日

うっかり外国語を使うことで発生する不条理の連鎖

以前のエントリで、会社のイベントの実行委員でテーマ名のジャパニーズ英語でひどいという話を書いたのですが。その後我慢できずに散々大立ち回りをしてみたのですが、結局最後は力及ばず元の案のままになりました。一応守秘義務もあるのであんまり書きすぎるとマズいのですが。結局のところ最後何に負けたかというと、我が社の「ダサさ」という伝統を守りたいという集合的無意識に負けたように思います。ともあれ決まったことはしょうがないので、僕がやるべきことは納得しなくても結果には従うことですね。

上記のジャパニーズ英語バッシングの際には「できもしない英語をやたら使いたがる日本人ってヘン」という話形を散々使わせていただいたのですが。知りもしない外国語や外国文化に対して失礼千万な態度を取るのは別に日本人だけじゃありません。例えば日本に行くスペイン人に「女体盛りはどこで食べれる?」と聞かれたことがありました。なんでも、スペイン人の作った映画で女体盛りが出てきて、それ以来スペイン人の間では女体盛りがすっかり有名になってしまったのです。まぁそこまではしょうがないとしても、体寿司っていう店の名前はいくらなんでもひどいと思いました。まぁ、翻訳エンジンの直訳なんでしょうけどね。
他にも、海外のアジア系のスーパーの日本食コーナーにはたいてい怪しげな日本語が書かれた商品が一杯並んでます。また、海外にはヘンな日本語名の日本食レストラン(たいていは中国人がやってて、寿司と中華とかインドとかがごちゃ混ぜになった物=wokを出している)も沢山有ります。

一方、芸術分野で「わざわざ外国語を使う」ということをやると、それが他国語に翻訳されるときに大変面倒なとこになり、結果として不条理の連鎖が起きるという事例をスペインにいる間に沢山目にしてきたのでいくつかご紹介しようと思います。
まずわが国が誇るクールジャパンの代表ともいえる宮崎アニメの「天空の城ラピュタ」。ラピュタという名前はガリバー旅行記から取ったらしいのですが、この言葉は"la puta"(スペイン語で娼婦という意味)が語源になっていて、それを「ガリバー旅行記」を書いたスイフトは知っててやっていたのに宮崎駿はそんなこと知らなかったんだそうです。ここにひとしきり書いてあります。在西当時、スペイン人のアニメオタクと映画の話をしてて、「当然"ラピュタ"見たことあるよね?」と言っても話がちっともかみ合わなかったときに初めて僕もこの事実に気付きました(スペイン語では"el castillo en el cielo"、英語だと"castle in the sky"と呼ばれています)。でもまぁこれはちゃんと気付いて代えた名前がそれなりにマトモなのでまだよかった方だと思うのですが。
次に"ターミネーター2"。これ、日本語で「地獄で会おうぜベイビー」と言ってるところはオリジナルの英語版では「hasta la vista(スペイン語で"また会いましょう")」と言ってるんだそうです。で、スペイン語に翻訳する際にこれをどう対処したかとうと、なんとこのセリフを「sayonara!」という日本語に変えてしまったのだそうです。だからスペイン人はsayonaraという日本語だけは割とみんな知ってます。

何よりも残念極まりないのは大島渚の「愛のコリーダ」でして。"コリーダ"はcorrida de toros(闘牛)というスペイン語から持ってきたのに、スペイン語でのタイトルは"El imperio de los sentidos"という名前になっていて、corridaがどっかに行っちゃってるのです。なんでも、フランス語のタイトルをつけたときにロラン・バルトの日本文化論"表徴の帝国"(ちなみに。これ自体はすごく面白い本です。)をもじって"官能の帝国"という名前をつけちゃったのを、そのままスペイン語にしちゃったんだそうです。だから、スペイン語でも"官能の帝国"というタイトルになっています。例によってwikipedia様にその辺のいきさつが書いてあります。
その昔、語学学校で日本の映画の話になったときに先生が、「私が昔"El imperio de los sentidos"という日本の映画を見たことがあって…」という話を始めたのですが。最初は何の映画の話をしているのか全く理解できませんでした。でもそのクラスに日本人なんて僕しかいないから、しょうがないので頑張って話を聞いてみると。先生が「男のチンコを女が切り取ってしまう」という説明をしたときにようやく愛のコリーダのことを話しているんだと理解しました。そして"コリーダ"がスペイン語のタイトルには使われてないことに愕然としました。

というわけで。優れた芸術作品を作る人は外国語をよくよく考えて使いましょう。場合によっては本人も予想してなかったような残念な訳し方をされてしまいます。しかしなんでスペイン人は女体盛りとか阿部定とか、そんな偏った日本だけを映画で知ってるんでしょうかね。

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