2013年5月28日火曜日

語学とお仕事(3)

今回は語学とお仕事という話で書きたかった本題。社員の語学力向上を願うなら会社がどうすべきかについて。

なぜ上の人が僕に社員への英語教育について相談してきたかと言うと。たぶん僕が「取り立てて英語が出来るわけでもなかった日本育ちの普通の理系社員が日本にいながらTOEIC900点(これも半分たまたまなんだけど)を取るに至ったモデルケース」だからなんだろう。確かに帰国子女や留学経験者でもない普通の理系社員がそこまでたどり着いた事例はあんまりないので、二匹目や三匹目のどじょうを狙いたがるのは分かる。で、なぜそうなったかと聞かれたら、僕の場合、努力が報われなかったら会社を辞めるくらいのつもりでやっていたからだということになる。しかしそんなことをどこまで上の人に向かって言って良いのかよく分からないので困る。ついでに言うと、そんな僕の英語力もたかが知れてて、ネイティブ同士の会話は何言ってるか全然分からない事の方が多いということも分かって欲しいんだけどな。。

そもそも。我が社では語学なんて全員が出来る必要は無いので、得意な人が自分の芸風としていけばそれで十分なんじゃないかと思う。楽天みたいに商社としての色合いが強かったり、ユニクロみたいなグローバル企業なら、社員全員に英語を強制するのも意味があるかもしれない。しかし我が社はドメスティックな製造業の会社であり、そこには設計したり生産したり…いろんな役割を果たす人が必要になる。会社の仕事というのは色々な技能を持った人が集まったプロジェクトやチームが組織として機能していれば成り立つので、プロジェクトやチームの誰かが語学ができる必要はあるんだろうけど全員がそれをできることは必然では無い。語学というのはプログラムを書くとか、回路設計をするとか、生産管理をするとか、そんなのと同じで技能の中の一つにカウントされていれば十分だと思う。

僕なりに会社がどうすればいいと思うか一言で言うと。社員に対して語学を「教育」しようとするのはもうやめて、努力しようとしている人を支援することと、努力した人を公正に評価してあげることの二つだけを会社がやればいいと思う。
まずは、中途半端な語学研修プログラムを社員に提供するのはやめた方がいい。会社の語学プログラムにもいいところだってあるのかもしれなけど、「会社の研修を受けてるから自分は語学のために努力している。これでいいんだ。」という満足と免罪符を社員に与えているという負の側面が強いように思える。しかし、特に必要に迫られてもいない状況である程度のレベルまで語学ができるようになろうと思ったら、レッスンを受けてるだけでなく、ネチネチ単語を覚えるとかコツコツとシャドウイングを繰り返しすとか、そういう努力を自発的にやらないと身につくわけが無い。しかも、人によって向き不向きがあるので、どのアプローチが効果的かは人によって異なる。だから、「自分にあった方法を考えて、自分で努力してください」とはっきり宣言した方がいいだろう。
そして。改めて言うと、会社がやるべきことは語学に対する努力を支援したり、その成果を公正に評価した上でキャリア設計などに反映させていくことだけなんじゃないだろうか。「支援」という意味では、ワーホリや自主的な語学留学で外国に行ってきたいという人を一年くらい休職扱いにしてあげるというのはアリだと思う。我が社の現行の制度では青年海外協力隊に行くための休職は認められるようだけど、ワーホリや語学留学も認めれば自発的に語学を習得したい人への支援になるので、ヘタな語学研修プログラムを社員に提供するよりよっぽど効果があると思う。
「公正な評価」という意味では、海外研修や海外駐在などの機会を得るための語学力の線引きをある程度明確にするべきなんじゃないかと思う。もちろん海外研修や海外駐在の対象者を選ぶにあたって語学は一要素でしかないんだろうし、「語学ができるんだったら海外研修に出す必要なんて無い」というのは出す側の言い分としてあるのかもしれないが。かといって、ある程度ちゃんとした線引き(あんまり気は進まないけど、例えばTOEIC何点以上とか)を持たないと、昔の僕みたいに「あの程度の語学力で外国に行った奴が、帰って来たころにはペラペラになってるかと思うとバカらしくて日本で自分の時間を削ってまでチマチマ努力する気になれない」と思う人は必ず出てくると思う。上述の通り、語学力を日本に居ながら伸ばそうと思ったら本人が自発的に努力するしか方法は無い。語学への努力が給与などの形で即物的に還元されるわけでも無い以上、せめて海外研修や海外赴任の機会を得るための最低限の語学力の線引きくらいは持つべきだと思う。でないと社員も「語学をやれと言うけど、どのレベルまで達することを会社は求めているのか良く分からない」と、目標感が定まらなくなってしまうと思う。

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以上ここまで書いてみて、「日本に居ながら語学という技能を習得するために、会社員は自分の時間を削って苦痛を伴う努力を強いられる」という書き方になってしまったけど、これはなんだか左翼的な感じがしてちょっと不本意だ。会社と社員という労使間の関係にフォーカスしてしまうと、語学そのものの楽しさとか、そういう話が出てこなくなってしまう。
しかしながら、家父長制度を会社組織に援用したような「年功序列、終身雇用」の風潮が未だに根強い我が社は、「社員の語学力向上を会社側は望んでいる。しかし、終身雇用を前提とした会社のルールによって社員を縛っていることによって、ワーホリや語学留学で社員が自主的に語学力を向上させる機会を社員から奪っている。一方で会社は中途半端な語学研修プログラムを日本にいる社員に提供しているが、これで会社が思い描いているような語学力を社員が得るような結果にはなっていない。」という倒錯した状況にあると僕は思う。外資や楽天みたいになるべきだとは思わないし、僕はどっちかというと我が社はまだ日本企業のいいところを残している方なのでそれは大事にしてほしいと思う。だけど、もう一段社員に自由を与えて放ったらかしてあげれば、少しでも悪循環から抜け出せるのではないかと思うんだけどな。

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