2013年5月25日土曜日

語学とお仕事(1) 

先日。
会社の上の人から「社員への語学教育のあり方」について相談された。とりあえず、「skype英会話とかあんなのを活用して、とにかくなるだけ毎日でも喋る習慣をつけてはどうでしょうか?」と、薄っぺらい上に自分自身でも15点としか思ってない返答をしてみたものの、なんとなく言い足りない感じだけが残ってしまった。で、よくよく考えてみたら、僕はその昔「語学に関する努力を会社がちゃんと回収してくれなかったら転職しよう」と思っていたということを自分自身ですっかり忘れていたようで、たぶんこれは無意識的に抑圧されていたとか、そんいうことなんだろうな。だからこそロクな受け答えができなかったんじゃないかと思う。そこから色々考えることはあったんだけど、とりあえず今回は第一回として「語学」という観点から自分が会社に入ってから今までを振り返ってみることにする。

今をさかのぼること10年以上前。
入社当時、僕の語学力は理系の新入社員の平均よりはちょっとマシなくらいでしかなかった。新入社員研修のときに人生初めて受けたTOEICは確か525点とか、そのくらいだった気がする。この後5年くらいの間は仕事で英語を使う機会もほとんど無く、語学のための努力は会社の語学研修で週一回グループレッスンを受ける程度で、まぁつまり努力と言えるような努力はほとんど何もしてなかったに等しい。

状況が一変したのは、英語がペラペラの日本人上司と外国人二人のチームに配属されたときだった。この日を境に会社での会話やメールは基本的に英語になった。さらに、このチームの仕事は海外との共同作業を含んでいたおかげで、上司から「じゃぁ君は、明日から毎日夕方5時になったら海の向こうにいるxxx(オランダ人。当然日本語なんてできるわけない。)とチャットで進捗報告しあって」とあっさり言われてしまった。これはなかなかの無茶振りだった。チャットのための文面を半泣きで事前に作文したり、そのために英語の文法について高校の教科書から見直したりすることもあった。当時は英語で寝言を言ってたこともあるくらいなので実際辛かったんだと思う。しかし3-4ヶ月経った頃にはそれなりにゆとりを持ってチャットや職場での会話がこなせるようになっていた。この頃に試しにTOEICを受けてみたら780点取れた。一切準備せずに受けたにしてはまぁこんなもんだけど、ちゃんと準備して受けたら800点は越えそうだなと思った。ここから得られる教訓は「必要に迫られるという事は語学力の向上に寄与する」という至極当たり前の話であろう。

これ以後、上の人からは「チャンスがあれば将来は海外に行けるように考えてあげるから、そのときのために英語は頑張っておくように」なんて言われるようになったので、その気になって英語のニュース番組をpodcastで聞いたり、単語を覚えたりするのを毎日やっていたところに事件が起きた。とりたてて英語ができるわけでもない(と少なくとも僕は思ってた)職場の後輩が会社の海外留学制度で海外に行くことになったのだ。正直なところこれはすごく悔しかった。言っちゃなんだが、あの程度の語学力で外国に行かせてもらえて、帰って来たころにはそりゃペラペラになってるんだろう。って思うと、給料が上がるわけでも無い上に、本当に自分が外国に行かせてくれる確約も無いのに自分の時間を削ってまで語学のために努力してきたのがバカらしく思えてしまったのだ。
ここから得られる教訓として、会社側には「意欲を失わせないためにも会社側の公平な扱いは大事」ということ、社員側には「人の言うことを信じるというのは多大なリスクを伴う」ということになる。

さて。ここでどうしたか。結局はこう決めた。
・英語についての努力は継続することにする
・とりあえずの目標として、一度本気で勉強してTOEICを受けてみることにする
・そのTOEICでそこそこの点数取れても、会社が外国に行かせてくれなかったら転職する
ということにした。つまるところ、努力に会社が応えないならそれを評価してくれるところに自分を売り込めばいいと考えたわけだ。
この頃の僕を励ましてたのはH2のはるかちゃんのこの言葉だった:「いいじゃない。だれのためにがんばっても、がんばった自分は木根君のものよ。」
ここからは人生で最初(で、もう二度とやりたくない)の"TOEICで点数を取るための勉強"をやった。TOEIC用の問題集をやってみたり、自宅でできるTOEIC模試みたいなのを片っ端からやってみたりもした。先日久しぶりにこの当時の単語カードを見てみたけど、大半の単語を今は全く覚えてもいない。その後使う機会が全然無いような経済用語ばっかりだからまぁしょうがないのだが。この努力と、たまたま受けたときの問題が簡単だった(実際、平均点が通常よりも50点くらい高かった)ことも相まって、915点という予想をはるかに上回るスコアを取れてしまった。ちなみに今TOEICを受けたらたぶんやっと800を超えるくらいで、900はまず超えないと思う。ともあれ、いきなり900点とれちゃったので、もう今後一生TOEICのために努力なんかしないと決めた。「点数を取るための勉強」というのは本当につまらない上に、単語をほとんど忘れてることからも分かるように結局は身につかない。

これ以後、英語のために努力らしい努力をした記憶はほとんど無い。まぐれで取れてしまったとはいえ900点超えという点数はそれなりに会社に対してアピールする材料にはなったようで、結果として僕は会社から外国に行かせてもらえる事になった。めでたしめでたし。がしかし、行き先はEUでも最低の英語通用度を誇るスペインという国だった。これは全く予想してなかったことで、当初は「え~英語通じないじゃん。。」と凹んでいたものの、そんな贅沢を言ってられる余裕はなかった。まぁ、結果としてはすっかりスペインとスペイン人とスペイン語が好きになって帰って来たので良かったのだけど。

スペインとスペイン語の話は書き始めると長くなるので置いといて英語の話をすると。スペイン在住当時は語学への全ての努力をスペイン語だけに向けていたので、英語の語学力そのものはちっとも向上しなかった。むしろスペイン語という異物が入ってくる前の方が「外国語=英語」だったので迷いがなくて英語が上手だったんじゃないかと自分でも思っている。ただし、スペイン語にしても英語にしても、乏しい語学力を運用して自分の考えを伝えたりするのはスペインで生活したおかげで少し上達したので、これは英語で話すときにも活用されているのであろう。しかしながら、スペイン語ばっかりやってたおかげで英語という言語は僕にとって「他に共通言語がないときに仕方なしに話す言葉」「生きた生活の言葉と思えない」「中学生くらいからやってる割には結局ネイティブの会話は何言ってるか全然分からない言葉」というような位置づけになってしまった。今でも語彙力などの総合力では圧倒的に英語の方が上なんだけど、それでもスペイン語が通じる相手には極力スペイン語で話したいと思ってしまう。


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