2013年8月25日日曜日

「日本はこんなにたくさん日本人を必要としていない」から「世界はこんなにたくさん日本人を必要としていない」へ

派遣社員の規制緩和が検討されているようです。趣旨としては「派遣社員の雇用の安定化」とか言ってはいるんですが。もう少し掘り下げて言うと、「もう日本は派遣社員なしでは立ち行かない」「みんなが正社員という世の中を維持するのはもう無理だから、せめて非正規雇用をパートやアルバイトではなくなるだけ派遣社員にしよう」と言ってるようなのです。でもこれって小泉以降の規制緩和路線そのものであり、結局のところ雇う側にとって都合の良い方向に向かうんでしょうね。
終身雇用モデルで雇用される人はこの先益々減っていく方向に向かうでしょうし、この終身雇用モデルによってある程度支えられてた均一な社会も崩れて格差が拡大する方向に向かうことでしょう。

「日本はこんなにたくさん日本人を必要としていない」というのは、10年ほど前に田舎の製造業のわが社に就職したときに直感的な印象でした。当時、製造は海外シフト可能な物はひとしきり海外シフトが完了していて、プログラムなどの開発業務もインドに外注できるか?とか言い出してたところでした。社会の授業で習った「産業の空洞化」が生産だけでなく開発にまで及び始めた気配を感じたのでした。当時社会問題になりはじめていたニートや引きこもりという人達は、たぶんこういう空気に敏感な人たちなんじゃないのかな?なんて思ったのを覚えています。
あれから10年。経済成長の伸びしろがいよいよなくなってしまった中で利益を確保するために、企業はどんどんなりふり構わなくなりました。たとえば追い出し部屋を構えて陰湿なリストラを始めたり、妊娠した女性社員を退職に追い込んだり(マタハラっていうらしいですね)、低賃金で自殺に追い込まれるくらいの激務を強いるブラック企業が問題になったり…こういった現象は日本式の終身雇用モデルの終焉とかっていうレベルの話じゃなくて、単純に「社会がこんなに日本人を必要としていない」ということがより顕在化してきたんじゃないかと僕には見えるのです。ここでいう「日本人」というのは、より厳密には「これまでの日本人の生活水準を維持して暮らす日本人」のことです。

一方で、日本という国そのものに対する帰属意識の希薄な”グローバル企業”が台頭しめはじめました。ユニクロの会長は世界同一賃金を導入することで、仕事に付加価値がつけられない人は年収100万円になるのも致し方無いと言ってるのですが。これってつまり、「替えがきく=誰でも出来る仕事は年収100万円の奴にやらせればいい」とあからさまに言ってるわけですよね。これから途上国にどんどん展開していこうとする”グローバル企業”としては、誰でも替えがきくような日本人に対して日本人としての給料払うよりは、今後成長が見込める途上国の優秀な若者を日本人並みの高給で釣る方がメリットはあるのでしょうね。
英語を公用語化しているところからも分かるように、最早ユニクロは彼ら自身を”日本の企業”だと思って無いんでしょうね。良い悪いはさておき、”グローバル企業”というのはそういう物なんでしょう。彼らが言ってるのは「日本はこんなにたくさん日本人を必要としていない」ではなく、「世界はこんなにたくさん日本人を必要としていない」ということなんだと思います。
さらに日本はTPPに加盟しようとしてるんですよね?EUが"ヨーロッパ"という共同体幻想を背景に共有しているのと違って、TPPは文化的な背景が全然違う国同士が参加しているので、コケるか或いは自由貿易協定に毛の生えたもので終わるような気がしているのですが。ともあれ日本に移民が沢山入ってくるのはおそらく避けられないだろうと思います。


この先の日本という国の姿をちょっと予想してみると。

A. 欧州の先進国のようになる:日本国民の間でも格差が拡大する上に、貧しい日本人はより貧しい国から来た移民に仕事を奪われる。貧しい日本人は移民排斥を訴えて右傾化する。

B. そこまで変わらない:日本語という難易度の高い言語や、日本人のムラ的な閉鎖性が障壁になって、貧しい日本人にも一定量の需要が発生する。格差はありながらも今とそこまで変わらない。

どっちにしても排外的な傾向が加速する気がする。今のところ日本では、自民党の規制緩和路線によって発生した社会的弱者が右傾化して安倍政権を支持していることで奇形的な安定を得ていますが、いずれ血盟団みたいなのができて安倍や柳井や三木谷みたいな”グローバル企業推進派”を襲うような事になったりするんじゃないだろうか?

あと、他に有り得る可能性は

C. 貧しいけど共産的な農耕社会になる:”グローバル企業”が当たり前になった結果、日本人のエリート層は日本に縛られる意味を見失って海外流出。元から資源が無い上に産業まで無くなった日本に残された日本人は、貧しいながらも牧歌的な農耕社会をつくる。

どっちにしても、日本人の表面的な器用さと内面的な不器用さがどんな結果をもたらすのか、予測は困難を極めます。

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