これを書いている現在、中居君の女性トラブルの問題からフジテレビの静止画記者会見へと飛び火して、中居君は芸能界を引退し、フジテレビはスポンサーがどんどん撤退している…という状況です。世間の非常識が常識としてまかり通ってきた芸能界も、とうとう「コンプライアンス」の審級に晒される時が来たのでしょう。そのこと自体はどちらかと言うと前向きに捉えるべきだと思うのですが、その一方で、そんなにこの国の有り様が大きく変わったようにも思えないのです。なぜなら、中居君やフジテレビはずっと「守られている側」にいて、そこから急に雪崩を打ったように「攻撃される側」に変わっただけで、その潮目を分けているのが日本の社会を覆っている「なんとなくの空気」であることは以前と何も変わらないよう見えるからです。
今回の件からは、数年前にジャニーズの性被害問題が取り沙汰されたときと同じような印象を受けました。ジャニーズの性被害問題については、我々一般市民でも大昔から噂としては聞いたことのあるくらいの「公然の秘密」でした。でも、「芸能界=世間の常識が通用しない世界」にはコンプライアンスの力学はずっと働かずに、「なんとなく黙殺されている」状態が長年に渡って続いてきたわけです。そこからジャーニー喜多川が亡くなり、海外のメディアに取り上げられたことから、急に潮目が変わったようにジャニーズ事務所は世間から攻撃され、あれほどの栄華を誇った帝国はあっという間に瓦解しました。
ちょっと前まで「守られている側」にいたのに、ある時から急に「攻撃される側」に転落するというのは日本の「いじめ」の構図によくある話だと思います。市民の成熟度が急に上がって個々人が声を上げた結果として中居君やフジが叩かれているのではなく、大半の日本人は「なんとなくの雰囲気」につられて「守られている側」から「攻撃される側」に転落した人達を叩いているだけなのではないでしょうか?そもそも中居君やフジテレビ以上に、自民党やその関係者など、もっと叩くべき対象はあると思うのですが。そこはウヤムヤになったままですよね。。
ここまで後ろ向きな事ばかり書いてしまいましたが、今回の件は見方によっては前向きに捉えられるところもあると思います。今回の件で希望が持てる要素があるとしたら、この国の「空気」を長年に渡ってリードしてきたテレビというメディアが瓦解しはじめて、攻撃される側に回ったということです。若い人はさておき、ジジババに対するテレビの影響力はものすごく高いです。今回の件でフジ以外のテレビ局はここぞとばかりにフジを叩いていますが、あれはフジのオウンゴールというよりは、テレビというメディア全体の「終わりの始まり」を告げているように思います。
僕だって後ろ向きな事や文句ばっかり言ってたくもないので。。せめてここから日本全体の潮目が変わって少しでも良い方向に向かってくれることを期待します。