世の中のブームから1か月遅れくらいになりましたが、子供が見たいと言うので一緒に推しの子を見始めました。まだ4話くらいまでしか見てないですけど、とりあえず今のところ面白いです。原作を読んだことも一切ないので、今後どう展開するのか全然わかっていないですが、初回の90分だけで何回も泣けてしまいました。なんだったら初回だけで終わってもいいくらいの出来でした。これで、「アイ=完璧な存在の喪失」という強烈な体験を見ている側と共有することに作り手は大成功したと思います。
アイというキャラクターは巫女的な素養を持ったスターという意味では、我が国におけるアイドルの典型例だと思います。ただしその巫女性は「誰かを好きになったりすることができない」というアイの抱えている空虚さとトレードオフによって成り立っています。そして、アイは死ぬ間際に、自分の子供達だけでなく、刺した相手も含めて世界全体を愛して亡くなることになります。アイの娘ルビーは自分達の父親についてアクアに聞かれた時に「処女懐胎」という言葉を持ち出しますが、この言い方を借りるならば、アイは出産によってマリアになり、死によってキリストになったと思います。この点において、人類史上最高の偶像となって死んだとも言えるでしょう。
日本では、アイドルは「好きになってもらうのが仕事」の世界です。だから、どんなに売れたとしてもお客様のために奉仕するというキャラクターで居続けることが求められます。だからこそ、「恋愛禁止」などという人権を無視したスローガンを平気で掲げていたり、それを破ったアイドルが頭を丸めて謝罪させられたりすることが実際に起こります。推しの子は見てる側に「こんなのちょっとおかしいよね?」という投げかけをしつつも、それと同時に「推し=偶像を崇める」という行為に耽溺せずにはいられない我々日本人の病も描いているように思いました。
ところで、頭を丸めたAKBの子は去年YouTuberと結婚したのでしたっけ?
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